街角のバトルロイヤル
それは、横浜のとあるラーメン屋で起きた。
午後4時頃、比較的空いている時間帯。10人も入ればいっぱいになるカウンターだけのお店で、客は学生が二人きり。時間帯もあってか若い店員が一人で切りもりしていた。
そこに「すいません、トイレ貸してください」とバックパッカー風の若者がやってきた。
「どうぞ、カウンターの奥です」
店員が若者をちらりと見て言った。
しばらくしてトイレから若者が出てきて、そのまま出口に向かった。
「ありがとうございました」
と若者の声。
店員が驚いて「えっ?トイレだけ?ラーメン食べないの?」と聞くと、若者が振り返り「また今度!」と爽やかに答えた。その笑顔は、さわやか!という以外にないくらいのいい笑顔だった。そして、若者はそのまま出ていった。
店員は置いてかれたような顔で「やめて!」と小さくつぶやいた。
私は思わぬ場面に笑いをこらえるのが必死だった。
店員は気持ちの捌け口を誰かに求めたのか、私に「変な客ですよね、…あっ、客じゃないか…」と言ったが、そのあと小さな声で「やめて!」と言ったのを私は聞き逃さなかった。
*トイレ繋がりで…、写真は福岡の天神にあった盲導犬用公衆トイレです。