沈黙のうちに、人は新たに つくり変えられる
アントニー・デ・メロ 「心の歌」(女子パウロ会出版)
私たちは、いつも自分のことを気にかけすぎている。
自分は今どうだ……、どう観られているのか、幸福だ、いや不幸だ、どうしたらいい?……、と、自分中心に考えている。
それは一見、「自分を見つめている」姿勢のように見える。
だが、実際には、自分を見ているようで、「本当の自分」を見ていないのだ。
見ていたのは、自分の持っている価値観から判断した「虚の自分」である。
多くの人は、自分が囚われている価値観(視点)で、自分や他人を見ている。
お金がないことを惨めに思う人は、どれだけ持っているかの視点で自分や他人を評価する。学歴がないことを引け目に感じている人は、他の人の学歴が気にかかる。かつて、地位や家柄ばかりを重んじて、結婚相手を選んだ人たちもいた。
あなたは自分を見ているつもりで、実際には、あなた自身の価値観が創り出した世界の中に映っているだけなのかもしれない。
では、自分を見つめるとはどういうことか?
大自然の中に出ていこう。
海や山、星空の下で、静かに呼吸していると、自分への関心が薄れていく。大いなる自然の中では、自分は何とも比べられない。
そして、大自然の中でゆっくりと解放される。
……沈黙は、そんな状態の時に現れる。
人が自然と一つになる。そこに沈黙が生まれる。
大宇宙の中にいた記憶……、それが、どこからか蘇ってくる。
そうして、ふと気がついたとき、以前と少し違う自分がいる……。