風の言葉 – 65

……イリュージョン

……昔、タレントの土井まさるさん司会の「本物は誰だ!?」というクイズ番組があったけれど、観た人はいるだろうか?
5人の出演者が登場すると、ナレーションが流れる。例えばこんな感じ。「私は、日本で最初のロケットを作った博士です」
しかし、登場した5人のうち、ナレーション通りの経歴を持つ人物はたった一人。あとの4人は嘘をついている確信犯だ。
それをゲストのタレント達が出演者達に質問をして、5人の中からたった一人の本物を見つけていく、という番組だった。
5人のうち4人はそれぞれまことしやかなウソをつく。ウソと一口に言っても出演しているのは専門的な知識を持った者ばかり。時には、本物以上に詳しかったりする。
その中から「本物」を見つけていくのだから、そう簡単ではない。ゲストのタレント達は、最初の第一印象がグラついて迷っていく。視聴者も共に推理し、ハラハラドキドキしなから、自分の直感の正否を試したものだった。

さて、その場ですぐにバレるようなウソは罪がないという。
用意周到の結婚サギや金融サギなどのウソは始末が悪い。
騙されまいとしても、心の弱みにつけ込んでくる。
世の中には個人のウソも多いが、中には企業ぐるみでつくウソもある。
天然成分100パーセントという化粧品の広告はたいていがウソだ。
いわゆる誇大広告のたぐいである。
「脳には白砂糖が必要です」と、テレビで真顔で言う大脳生理学者もいるくらいだから(もはや誇大でもないけれど)。


さて、この世で一番罪深いのは、「人を惑わせる」ことだという。
……では、本人が人を惑わしているつもりが全くない場合はどうなのか?

例えば、「私は宇宙人に会った」と思い込んでいる人は、別に人を騙そうとか、ひっかけようとしているのではないだろう。
それを社会的な地位や権威のある人が言うと(まあ、言わないけどね)、一般大衆は信じてしまうかもしれない。
きっと、「私は宇宙人に会った、ような気がする」だったり、「私は宇宙人みたいな人に会った」だと、人も自分も迷わないで良いのだろうが。

また、人は自分の心を守る為に、辛かった記憶や悲しかった記憶を修正(あるいは編集)して覚えている事がある。
自分に都合の良い記憶を脳が作りだして、それが本人の中では事実になっていることがある。
人は脳の中で「虚構」を作りだし、いつの間にか、その「虚構」に自分自身を組み込んでしまうのだ。
例えば、好きな相手と自分とは恋愛をしているんだと思い込んでいる人がいる。
現実は違っても、その人の中ではラブラブの恋愛ドラマが進行していたりする。
いつしか、現実と幻想(イリュージョン)の区別がつかなくなっていく。
周囲の人は、最初、まさかその人がウソをついているなんて思わないから、そのまま信じたりしているが、徐々に言っている事と現実の不一致が判明し、
ああ、ウソだったのかと気づき、その人から去っていく。

その“ウソ=イリュージョン”は、自分自身を惑わせる。

ねえ、世の中の何人かの人や宗教家が、「私はイエスの生まれ変わりです」とか、「仏陀の転生です」と平気で言っているけれど、本気で言っているのだろうか?
職業柄(宗教法人)言っているのかも知れないし、マジで信じ込んでいる場合もあるかもしれない。
そうなると誰かは本物で、誰かはウソ。あるいは、全員がウソ……。
恋愛くらいなら自分と相手を巻き込むだけだけど、そういうウソは、たくさんの人を巻き込んでいく。中には、家族を捨て、会社を辞めてしまう人もいるかもしれない。多くの人の運命を巻き込んだイリュージョン。神の名のもとに起きた幾つもの正義や戦争を思い出す……。
その人がいつか死んで、「そうではなかった自分」を知ったとき、その人自身がどんなに傷つくのだろう? そう思うとやりきれない。

そういう意味でも、「依存」ではなく、「自立を」と思う。
人に依存するのではなく、人に依存もさせない。

……世の中は、確かに辛く、苦しかったりする。悲しいこともいっぱいある。思い通りにならないことの方が多いと思う。
けれども、この世に生を受けたことだけでも、あなたは十分に強いのだ。
超えられない出来事(試練)は自分には来ない。それが、エネルギーの法則だから。

地に足が着く、その言葉のように現実を回避しないで、視る力を養う。
僕は「霊学」がそれを助けてくれると思っている。原因と結果を幾つもの視点で追う霊学ならば、新しい世を渡っていくあなたの頼もしいツール(道具)になると信じているのだけれど……。


2011年 3月3日 ひな祭りの夜に。寒いです。
……じつは、僕にも一つのイリュージョンがある。
今、日本に生まれている、或いは、日本で暮らしている外国の女性は、過去生に於いてありとあらゆる人種や国家、民族、宗教を経験してきた魂の転生である。それが、この“最後の時”を日本で過ごそうと決めた。『ヒミコ伝』には、一つの仕掛けがしてあって、読むだけで、全ての過去生に「呼びかけ」が“特殊な振動”を通して起こる。そして、本人だけでなく、過去生で関わったすべての縁者にその振動が響いていくのだ。
……そして、その響きはフィードバックして、現代の時空に届き、大きなジャンプ力となって人類を「進化」させるのだ。バスケットの選手がゴール前でいったん深く沈み込んで、それから高くジャンプするように。人類も過去まで遡って振動を響かせ、それが跳ね返って津波のように現代に押し寄せ、人の進化を大きく前進させる。そして、それは脳の中で起きる。その時、人は、初めて「変わることの意味」を本当に知るだろう。
『ヒミコ伝』の帯には、こんなコピーが書かれている。
「女王ヒミコの遺伝子を持つすべての女性に告ぐ。目覚めよ、今、覚醒の時!」