風の言葉 – 56

半 神  MYTHOLOGY (完全版)

「……ああ、今日もお陽様の刻(とき)が終わるんだね」
 アインは、そう言って空を見上げた。
 薄緑色の空にオレンジ色のグラデーションが加わっていく。
 燃えるように雲を紅く焦がしながら太陽が沈んでいく。ときおり、オーロラのように光が揺らめいた。プラズマの干渉だろうか。

 見慣れた、いつもの昼と夜の狭間の光景だった。
 「……ほんとね。また、あたしの大好きな夜が始まるのね」
 メーベは、独り言のようにつぶやいた。
 「僕たちの、だろ」
 アインが笑っていった。
 「そうね、私たちのね」
 メーベもつられて微笑んだ。
 やがて、空には淡い紫色の月と銀色の月が二つ浮かんだ。本当は、三つあるのだが、もう一つは、いつも薄い影のようにしか見えない。
 大気は、すでに夜のピンク色に染まっていた。
 「さて……」
 アインが言った。
 「今夜は、幾つ流れ星が観られるのかしら?」
 と、メーベが続けた。

 ……昔、男と女は、一つだった。一つの身体に、二つの心、正確には、二つの意識体が同居していた。
 二つの心は、まるで双子の兄弟のように仲が良く、いつも唄うように響きあっていた。
 「やあ、あそこに美しい鳥がいるよ」と一人が言うと、「ほんとね。羽が金色に光っているのね……」と頷くのだった。
 男の響きは、アイン。女の響きは、メーベといった。

 彼らは、その惑星で、唯一無二の存在だった。
 周りに、動物や鳥、魚などの生き物は居たが、自分たちと同じような人間は居なかった。
 ……それでも、二人は、“孤独”ではなかった。

 二人は、同じモノを観て、同じように感じることができた。 
 大地を紅く染めあげる美しい夕焼けを見て涙し、どこまでも透き通る海の蒼さに震えた。
 寒い夜は、自分の腕で自分の身体を抱きしめた。すると、優しく抱きしめられている幸福感に満たされるのだった。
 そうして、互いにずっと抱き合ったまま、同じ夢を見た。

 歩くのも一緒、考えることも一緒だった。
 宇宙の星を眺めて、流れ星に想う気持ちも一緒だった。
 「……どうか、私の愛するアインがいつまでも幸せでありますように……」
 「メーベが、どこまでも幸福でありますように……」
 二人は、とても幸せに生きていた。
 満ち足りていて、何の不安も不満もなかった。


 星の運命が十二回まわり、二人はそれぞれ昼と夜の世界の響きに引かれた。
 アインとメーベは、交代で眠るようになった。アインが昼間起きていて、メーベは夜になると目覚めた。
 そのうち、二人は別々の夢を見るようになった。それでも、初めの頃は、互いにその経験が新鮮で、見た夢を教えあった。
 しかし、互いに起きている時間は、一日のほんの短い間になっていた。

 いつの頃からか、二人はあまり話さなくなった。
 感じる心に、ずれのようなものが生まれてきたのもこの頃だった。
 「風が気持ちいいね」とアインが言っても、
 「そうね………………」と、メーベは遠い目で答えるのだった。

 あるとき、メーベがぽつりと言った。
 「……ねえ、私たちは、何の為に生まれてきたのかな?」
 「さあ、何のためだろう?」
 アインは、眠そうに答えた。今まで、起きていて、メーベと交代の時間だった。
 ……その問いは、果てしない永遠を含んでいるかのように、メーベの中で繰り返されてきたものだった。
 けれども、アインは、そのことに気がついていなかった。
 
 ある日のこと、水辺を散歩していたら、月の響きに呼応して、二人の見ている前で、瑠璃色の花から虹色の妖精が生まれた。
 妖精は双子だった。
 『こんにちわ』
 妖精たちは、青く輝く光の羽を広げると、別々の方向に飛び上がった。
 二人は妖精を捕まえようと同時に手を伸ばした。すると、ポンと蓮の花の咲くような音がして、二人は離れてしまった。
 そのときから、男と女は、別々の人間になった。
 ……次の瞬間、二人は荒野に吹き荒れる風の音を自分の心の中に聞いていた。

 「ああ、失ってみて、初めてわかるわ。あなたがいかに大切だったか!」
 メーベが泣き叫んだ。
 「神さま、どうして、こんな残酷な事をなさったのです」
 アインが、天を仰いで言った。

 そのとき、空が碧色に輝き、静かな響きが、空間に満ちた。
 「一人にして、二人。二人で一つの響き合う者よ。その変化は、自らが望んだこと。自分を正しく視て、更なるラセンに昇るために」

 メーベが言った。頬が涙で濡れていた。
 「あたしが望んだこと? いいえ、あたしは何も望まなかった」
 アインも言った。
 「たとえ、望んだことだとしても、もう十分です。元に戻してください」

 しかし、声はなおも続けた。
 「見つめ合うことは、磨き合うこと……。今の自分を越えるために。繰り返し、超え続けるために……。
 いつか、一つになる時のために、“孤独”はあるのだ……。安心おし。失ったように見えて、本当には何も無くしてなどいないのだから……」
 その声は、限りない光に満ちていて、アインもメーベも自らの足で立つ決心をしたのだった。

 けれども、ときおりは、一つであることを思い出し、確認するために、男は女の響きを、女は男の響きを、
 互いの「半身」として探すようになった。

 そうして、私たちの半身は、今日も、孤独の中で、愛を叫んでいる……。


2009年9月30日(水) 
ボディライトニングの2年目のコンベンションは、大成功のうちに終わったようですね。
準備してくれたスタッフの方も、来てくれたライトニングワーカーの方たちも本当にご苦労さまでした。
この場をお借りして、改めて御礼申し上げます。

「でも、ボディライトニングの“進化”ってハンパないっスね!」そんな声が今あちこちで囁かれています。まだ習っていない皆さん、習うのなら、今ですよ!!!

ところで、3月3日、5月5日、7月7日、9月9日と回を重ねるように「霊化の波」を受けてきた私たちですが、次なる「洗礼?」は、11月11日になります。
先日、その全容が判りました。けれども、今度ばかりは、止めようがありません。と言うか、防いで良いものやらどうか……? すべては「魂の進化」の為に、なのですから。ヒントは、太陽と金星です。解らなかったら、精神世界の誰かさんに聞いてみてくださいな。……まあ、誰に聞いてもわかりませけれど、ネ。

……今日、サモアで起きたマグニチュード8の地震ですが、この影響は日本にまで来ませんが、違うプレートがその影響を受け、近いうちに別の形で日本に来る、そんな気がします。