風の言葉 – 44

本音の言えない世界 ハア? 意識の自立?……遠いなあ……。

……最近、「本音」で語ったことある?

 言いたいけど、言うと角が立つし、世間を狭くしてしまう。
 かといって、黙ったままだと、こっちのストレスも大きくなっちゃう。

 人って、とっても矛盾している。
 よく、“本当のこと”が知りたいと言うでしょ。でも、「本当のこと」を書いたり、話したりすると、途端に、その事から目を反らしてしまわない?

 ならば、本当はきっと、「本当のこと」なんて、知りたくないんだろうね。
 怖いから……かな。

 「正しいこと」って、難しい。立場が違えば、正しいことが、「悪いこと」にもなりかねないから。
 それに、「正しいこと」を大上段に構えて言われたら、聞きたくない症候群に陥っちゃう。
 太陽は好きだけど眩しすぎて、月の明るさがいい! みたいな。

 「闇の中の明かり」が、人間にはちょうどいいのかもね。

 だから、「本当のこと」も知ってはおきたいけれど、自分の現実に置き換えたら、知らない方が好都合なことが多いんだろうね。
 例えば、テレビコマーシャルで有名なハリウッド女優の美しい髪の毛を魅せるシャンプーの広告があるでしょ。
 髪の毛にとってポリマー成分は、百害あって一利なしなんだけど、見た目の美しさや手の素通り感がいいから、つい選んでしまう。

 それが、「経皮毒」となって、体内に毒素を溜め込んでいく。
 でも、それが、癌に繋がったら?
 けれど、それを知っても、尚、ほとんどの人は同じシャンプーを買い続ける。
 理由は、見た目の美しさが欲しいからなのか……、聞かなかったことにしたいから……、かな。

 知ってた? テレビ番組の成り立ちは、広告収入だって。
 だから、クライアント(広告のスポンサー)に都合の悪い番組は、作れっこない。
 一番無難なのが、クイズ番組やお笑いバラエティー。
 雑学的な知識がいっぱいのように見えても、肝心の人体に危険なモノの知識は伝えない。

 そして、視聴者もわかっていて、騙され続けている。

 それは、宗教に頼って、その教祖がサギ罪で逮捕されても、その教団に留まるのと似ているよね。
 
 それって、「依存」だよね。

 何かに頼って生きていたいから?
 自分の行動に責任を取りたくないから?

 それとも、本当のことを知ってしまったら、自分自身を変えないと生きていけないから? それが怖くて、知らなかったふりを続けてるの?

 いずれにしても、依存の実情は変わらないよ。
 だったら、最初から、「本当のことが知りたい」なんて、言わなきゃいいじゃん。求めなきゃいいのに……。


 ……でも、人間は矛盾する生き物。
 自我と魂の求めるものは、いつも相反している。
 
 これほど世の中にウソが充満していて、本当のことに耳を塞いでいても、尚、“本当のこと”が布のほころびのように、ポロポロと溢れてくるのは、
 きっと、誰かが求めてるんだろうね。
 需要のない供給は成り立たないから。

 では、その誰かって、誰なんだろう?

 ボクは、それが“真の人間”なんだと思っているけど。
 今は、まだ闇の中の居心地の良さに包まれていても、尚、そこからの脱出を心の底では願っている。
 自分を変えようとする気持ちを持ち続けている。

 それが、本来の人間なのだとしたら……。

 もう少し、「本当のこと」を話し続けてみようかな、って思う。
 でも、また、耳も目も塞ぐのだろうけど、ね。

 
2009年2月16日 晴れ。
くたばれ!バレンタインも終わって、スーパーやデパートの棚から商品が消えたよ。で、今度は「ひな祭り」商戦ってか。
……ねえねえ、よく「人間って素晴らしい」とか、「まだまだ捨てたもんじゃないよ、人間は」って言うでしょ。
「失敗したっていいじゃないか、人間だもの」と相田みつおさんも言う。でも、あれって、人間が言ってるんだよね。自画自賛だよね。
人間以外の者は、人間のことを何て言ってるんだろう? 
例えば、クジラは? 牛は? 「殺したっていいじゃないか。仕方ないよ、人間だもの」って言ってたりして……。