風の言葉 – 09

「男の嫉妬」は国滅ぶ、「女の嫉妬」は星滅ぶ……
ある、お医者さんの本の言葉に、「男の嫉妬は国滅ぶ」、というステキな言葉が載っていた。
僕は、思わず「ウーン」と唸ってしまった。
「あるかもね……」と、思えるナイスな現実をいろいろと見てきたからね。
子どもの頃は、「勉強が出来る」、「スポーツが得意」、「マンガが描ける」、「芸術的才能がある」、「顔がでかい」とかが、カッコイイともてはやされたよね。
でも、誰もが持っているわけじゃないから、持っていない人は、持っている人を羨(うらや)んだりした。
「世の中は、不公平だ!」と思った人もいるかもしれない(あっ、オレか……)。
「嫉妬」って、身近な存在にするんだよね。
たとえば、自分の恋人が、ハリウッドのスターに憧れていて、部屋にそのポスターなんかが貼ってあっても、あんまり嫉妬したりしない。それどころか、「私もこの人好きー」と共感したりする。
恋愛も、勉強も、スポーツも、仕事も、あまりに相手が凄すぎると、尊敬して、憧れたりしてしまう。頑張って!と応援したくなる。ファンって、そういう心理だと思う。
ところが、自分の生活圏にいる人や、同じ道を目指している人間が、その対象だったりすると、恋愛の場合は「所有欲」という執着が、仕事や勉強や芸術、スポーツの場合は、「比較」という執着が、「嫉妬」という黒い魔モノを生んじゃう。
そこからは、地獄よね。
相手も苦しいけど、誰よりも自分が一番苦しい。
それも、「嫉妬している自分」に、自分自身が気づいていない時が、一番大変だったりするかも。
表面の自我では、「なんとも思っていない」と自覚しているのに、その人の事を考えている表情が怖かったりする。
気づくのも気づかないのも、苦しいけれど、抜け出るには、気づいた方がいいね。
なぜって、嫉妬している自分は、じつは、「次の扉」を開こうとしている自分だから。
意外でしょ。もっと、ネガティブなもんだと思ってたでしょ。
確かに、嫉妬そのものは、自分も相手も「破壊」するエネルギー。
でも、嫉妬とは、じつは、誰よりも「相手」の真の良さや凄さを理解できる、「審美眼」の結果だったりするんだ。
だから、それを見抜ける自分は、もっとも、その相手に「近い人間」とも言える。
努力すれば、その人間に近づける。あるいは、更に進んでいけるなら、相手を超えられる。
その「自分が変わる、きっかけ」をくれた人間、それを「次への扉」と解釈してもいいんじゃない。
問題は、「どう努力」するか、なんだと思う。
人は、どんな人も、他人にはなれないから。
自分を磨いて、「本当の自分」になる、それだけでいいんだ。
で、どうやって? それが知りたいんだ、よね。
自分と向き合う、残念ながら、それしかないかな。しかも、自分を好きになるために。その為には、イヤな自分を自覚して、何故イヤなのか? を問い続ける。で、どうすれば、そのイヤな処を改善できるのか? と思考し続ける。
「だって、できないもん」とか、「無理!」、「キライなものは仕方がない!」と目を背ける、あるいは、見ようとしないのは、ただの「逃げ」。また、自分をキライになってしまうだけ。それか、まだ自分に「余裕」がある。
方法の一つは、あきらめないで、「自分をキライなのはしようがない」、そこから、スタートする。
そして、「少しは、いいとこあるかも」って、他人のアラを探すように、自分の「良さ」を見つけていく。するとさ、結構あるじゃんって、気づけるよ。自分で否定してきただけ。たまには、他人の評価も信用してみようね。
いいとこいっぱいあっても、それに気づけない時は、自分は「ダメ」なまんま。
それで、人生終わりたければ、それも一興(いっきょう)。
でも、「嫉妬」する人は、どこかで「なにくそ!」って思ってる。
嫉妬してない人でも、ね。
ところで、思考する、と言ったけど、中には、脳内モルヒネの多量分泌で、左脳が働かなくて、「考えることもできないじゃん」と言う人もいたりする。
そんな人は、どうしたらいいの?
自己愛が、足りないんだよね。自分を大切にできない。現実の世界で、自分とうまく「折り合い」がつかない。
でも、そんな人こそ、「扉のそば」に居たりする。
夢想するエネルギーは、じつは、そんなに弱くない。現実を創っていく事もできる。
ビジョンを生むエネルギーだから。……それが自分にはある。
まず、それを信じることから始めてみようよ。
誰のためでもなく、自分の為に。
そして、次にね、自分の左脳を動かしてごらん。そのエネルギーで。論理的に構築された「現実」を創りたかったら。
やり方は、簡単。
歩き始める、といい。歩く、という行為は、左脳をとても刺激する。道や景色を眺めながら、それを覚えたり、整理、分析していくから。無意識のうちに。
だから、詩人や作家は、筆に行き詰まると散歩したんだ、きっと。
そして、左脳が動き始めれば、いつしか、自分と自然に向き合い始める。右脳の助けも借りてね。
人間の身体は、そんなに脆(もろ)くない。エンドルフィンは、あくまでも非常用の物質。
「弱い」と決めている自分が、それに頼っていただけ。
気が付けば、自分は弱くはなかった……。
さあ、歩きながら、自分の「道」を探そう。
「嫉妬」で、この星が滅んでしまわないうちに……。
2007年 9月11日 記