風の言葉 – 05

現状は変わらない……、でも、考え方一つで、
世界は180度転換する
……最近まで観ていたテレビ番組がある。
『バンビーノ!』っていう、料理の鉄人(?)を目指して、六本木のイタリアレストラン「バッカナーレ」で修行する若者のお話。
毎回、ムダに目力の強い、濃いキャラクター達が、これでもか! という自己存在のアピールを繰り返すドラマなんだけど、時折、中にキラッと光るセリフがあったりして、「うーむ、あなどれんなー」と感心させられてしまって、ちょっと口惜しい想いをしたりもする。
その最終回でのお話で、「バッカナーレ」のオーナーシェフだった宍戸鉄幹(市村正親)が、「おらぁ、いちから出直すんだい!」って、植木等の無責任野郎みたいに、ふらっと居なくなってしまうんだけど、その跡を継いだ、娘の美幸(内田有紀)、副料理長だった桑原(佐々木蔵之介)、ホール長の与那嶺(北村一輝)達三人が、仕事の後に飲みながら話し合うシーンがある。
美幸が、「あたし、バッカナーレを守っていく自信がなくなっちゃったあ……」とこぼすと、桑原も「正直、宍戸鉄幹に押しつぶされそうだ」と不安を告白する。
沈み込む二人。
ところが、そこに、与那嶺が、「僕はね、バッカナーレっていう、オモチャをもらったんだ、って思っているんだよ」と言う。
オモチャだから、護るとか、受け継ぐなんて、固く考えないで、自由に自分たちのすきにやろうよ、と。メニューもどんどん変えて、店の名前だって変えちゃえばいい、お客だって、宍戸鉄幹の味の客が来なくなったっていいじゃない。
そんな与那嶺の提案に、それまで不安感を募らせていた二人の目に輝きが生まれ始める。
「そうか……、だったら、やってみたい事がある」
「なんだか、わくわくしてきたなあ」
……現状は、前と一つも変わっていない。
けれど、たった一つの「言葉」、「考え方」で、それまでの不安が、希望に変わってしまう瞬間がある。
貯金通帳に、5000円しかない!いや、まだ5000円も残っている!と捉えるのとおんなじ。
僕は、そこにね、「自立」の輝きを見るように想うんだ。
集団の意識のフィールドからの「自由」。
特に、「不安のフィールド」は、伝染しやすい。
そこにはまってしまうと、柔軟な思考ができなくなる。
皆が、同じ方向を見てしまう危険性……。
……ならば、自分の現状は、どうだろう?
独りで、何かに、はまりこんでしまってはいないかい?
「こうしなくちゃ!」と、気負いこんでいない?
もっと、自由に生きていい!
宇宙は、そう言ってくれているように想うんだけど……。
あっ、そうそう、『バンビーノ』の最後で、宍戸鉄幹からの便りが来るんだけど、「……イタリアのイスキア島という小さな、小さな島で、店を開いた。日本人がやってるトラットリアなんか、誰も見向きもしない。開店以来、客は、一人も来ない。完璧な、Away……最高だ!」
ねっ、なんか、素敵じゃない。
【蛇足】 ドラマの中で出されているドルチェは、銀座の有名なイタリアンレストラン、落合シェフの『LA BETTOLA-ラ・ベットラ』のモノなんだって……
2007年 7月4日記