お告げ – 番外編1

「肉は食いたし、恨みは怖し」
イエス様はおっしゃった。
「人はパンのみにて生きるにあらず」
それに賛同して、「坊主肉喰や、今朝まで臭 い!」とわけのわからぬフォローをしたのは、浪速のスーパーバンド、おかげ様ブラザーズの きんた・ミーノだった。
彼は、「壁に耳あり、クロードチアリ」と いう名言を残したことで広く知られている。
ぼくは今でこそ、菜食中心で肉食を控えてい るが、かつてはお肉大好き人間だった。
神戸牛の霜降り肉や近江牛のサーロインな どをニンニクと胡椒と塩だけで焼いて、あつ あつを何のタレもつけずに食べるのが好きだ った。 また、すき焼きや水炊きなど、鍋物では肉 を誰にも渡したくないために、ほとんど生の まま食べていたように思う。おかげで、中島 らもさんからは、「鍋がたき」と憎まれていた。
それがどうしてあまり食べなくなったのか?
自分でもよくわからないが、いろいろと本当 の事がわかってくるうちに、自然に食べなく なっていったように思う。
いったい何を知ったのか?
柔らかいお肉の秘密
神戸牛などの高いお肉は別にして、一般に 食べられている牛はアンガスという品種改良 された種類である。この牛は、肉がやわらか く、脂肪も少ないために、多くの牧場で飼わ れるようになった。
しかし、その肉は牧草を食べていたのでは 柔らかくならないという。そのために、トウ モロコシや大豆などを大量に食べさせなけれ ばならない。一キロ太らせるのに、一〇キロ の穀物がいる。
中国はかつて国土の八〇パーセントが農業 という食糧自給率の高い国だった。ところが、 肉食の急増という食生活の変化で食糧を輸入 に頼るようになっている。ぼくが見た北京のM ハンバーガー店では人々が行列を作っていた。
自然循環農法家の赤峰勝人さんは、牛一頭 を飼うための牧草地をお米を作る田んぼに変える だけで、110倍もの食糧を人に供給できると 言う。
ところが、現実には肉の需要は増える一方 で、牛の食べる穀物が不足しているという、 食糧危機をお膳立てするような状況に陥って いるのだ。
おまけに食肉用の牛には、抗生物質や化学 合成されたビタミン剤が大量に与えられてい る。肉を柔らかくするために女性ホルモンを 入れるのも有名な話となっている。
では、無農薬野菜と同じように、無添加の 自然穀物だけで育てた高級な牛肉なら、いい ではないかと思われるだろう。
肉を食べることの本当のデメリット
肉の質に関わらず、肉食をしている人と穀 物と野菜だけを食べている人の違いは、今で は医学的にも証明されてきている。
肉食の人は、老化が早い、動脈硬化を起こ しやすい、疲れやすい、血液が汚れるといっ た身体上のマイナス面が目立つ。また、眠り が浅くなる、短気で怒りやすくなる、といっ た精神状態にまで影響する。カルシウムが不足しやすくなると指 摘する医者もいる。肉食によって、体内の微 妙なミネラルバランスが崩れるのだという。
野菜や穀物職中心の人は、いつまでも若々 しく、肌のきめも細かく、血液もきれいだという。 献血にも最適なのだそうだ。
玄米菜食を中心に暮らしている人は、まず 肉を食べない。正確には、「自然に食べたくな くなる」という。じつは、そこにある秘密が隠さ れているのだ。
実在の聖者、観世音菩薩となった王女、妙 善は、子どもの頃から肉が食べられなかった。 無理に食べさせようものなら、すぐに吐いて しまったという。
それは、彼女には、生き物の「痛み」が伝 わってくるからだった。
私たち人間だけでなく、動物も殺されるの を嫌う。「痛み」も感じるし、「恐ろしい」 と恐怖もする。トラやヒョウに噛み殺される 鹿の目を見て、「ああ、喜んでいるな」と思う人はいな いにちがいない。
「恐怖」は、体毒となって血液に流れ、肉 に浸透していく。それだけでも、食べると体 に良くなさそうだが、さらに「恐れ」や「痛 み」は、そのまま「意識エネルギー」として 肉に残留する。中には、「憎しみ」や「恨み」 となって残るものもあるかもしれない。
人類学の中で、人間が戦争を繰り返すのは、 肉食をしてきたせいだという大胆な説がある が、あながち遠いとは思えない。「恐れ」を 食べた人は、「恐れ」を体内で蓄積していく からだ。短気で怒りやすくなるのもそのせい だろう。
ほとんどの争いは、相手への「恐れ」から 生まれる。「恐れ」は、人から正常な判断を 奪い去る。
余談になるが、しばらく前に騒がれた「狂 牛病」は、原因についてさまざまな噂が飛ん だ。人智学の祖ルドルフ・シュタイナーは、 半世紀以上も前に「牛に肉を食べさせると気 が狂う」と説いていた。まさに先見の明であ る。
さて、肉は食べたし、である。そんなもの かまわないから肉を食べ続けるという人もい るだろう。また、ちょっとは控えようかなと 考える人もいるにちがいない。
ぼくはどうか? どうしても食べたく なったら、「般若心経」を唱えて供養しなが ら、「ああ、ありがたい」と感謝して食べる のはどうだろう。 そうすれば、ステーキやハンバーグも成仏 できるにちがいない……??。