お告げ – 22

冷やし中華の罠!


昔、カニクイザルが田舎家の縁側で包丁をせっせと研ぎながら、「毎日、お暑い中、ご苦労様です」というコマーシャルがあった。
たしか、どこかの遊園地の広告だったと思うが、暑い日が続くと、本当に身体にも「ご苦労様です!」と言いたくなる。
そして、私は暑い日々が続くと、なぜか無性に「冷やし中華が食べたくなる病」にかかってしまう。
さらに副作用として、キーンと冷えたビールで一杯!というのも付いてくる。

ところが(声を大にして)、である。
暑い中、「よし、冷やし中華を食べるぞ! 気合いダー」と、ラーメン屋などに駆け込むと、そこは、冷房がガンガンに効いていたりする。
ラーメンのようなぐつぐつと煮えたぎったスープを相手に格闘し、店内を駆け回る商売だから、クーラーでも入れないと倒れてしまうのはわかるが、客の方はイスに座ったままじっとしている。
そのうち、汗がクーラーの冷気で冷やされ、先ほどまでの「気合いダー」が、「もうどうでもええわ」というふうにゆるんでくる。
 
あれほど憧れた「冷やし中華」がクーラーで冷えた身体には受け付けなくなっていくのである。
そして、結局は、熱いラーメンを注文してしまう。

じつは私は、そんなこんなで、いまだかつてラーメン屋で「冷やし中華」を食べたことがないのだ。
コンビニで買った「冷やし中華」を生暑い自分の部屋で、冷たいビールと一緒にかき込む。今の楽しみ方はこうである。

同じ事は、かき氷にも言える。
昔、駄菓子屋の店先で、ジジババが汗をかきながら「かき氷機」を回して出来上がったキラキラと光る雪山のような結晶に、赤や緑色のシロップをかけてもらい、キーンと痛む頭を押さえながら、その冷たさを楽しんだものだった。
後で、鏡を見ると、真っ赤や緑色に染まった舌が見えた。
そのかき氷も今では、クーラーの効いたお店で食べるようになった。
 
クーラーで身体を外から冷やし、さらに、冷たいモノで内側から冷やす。
これでは、身体に「ご苦労様」なわけがない。
 
「夏は暑いもんだす」と言った、風大左エ門(いなかっぺ大将)の言葉を私たちはもう一度噛みしめるべきではないか。
暑い中でこその冷やし中華、かき氷である。
季節感を失えば、人間性も崩壊していく。
夏は汗をかいて、水分を取る! これが陰陽の極意っちょうもんだわ。


最後に幸福屋から一言。
愛する人よ、トコロテンには絶対に黒蜜でんがな。