お告げ – 142

……成功の甘き香り
……ちょっと聞いて、聞いて!
世の中にはいろんなビジネスがあるもんですなあ。
なんでも、「成功のなんとかステップ」というセミナーがあって、一度になんと300人もの人が受講しているんやとか。
どこか地方のホテルで、何日かの缶詰状態になっての集中講義で成功の為のノウハウを教えてもらえるそうです。
受講費用は30万とも40万とも。……とすると、1回のセミナーで、9000万円から1億2000万円のビジネスとなる計算。
ホテルの宿泊や食事、なんやかんやで経費が25%かかっても、……ええーっとなんぼやろ? まあ、たいした額になるわけですわ。
受講している人は、どんな人なのかな? 起業家を目指す人? 実際にお店とかを経営している人?
果たして、そのセミナーで成功する人はどのくらいいるのだろう?
一つだけはっきりしているのは、そのセミナーで大成功しているのは、そのセミナーを考え出した人だってこと。あったま、よろしなー!
さてさて、いわゆる自己実現のセミナーは、アメリカから発祥したビジネスなのですよ。
「成功セミナー」のジャンルには幾つもあって、実際に会社を経営している中小企業の社長様向けのモノから、これから独立をして起業したい人、独立したけどうまくいっていない人、
また、有名になりたい、お金持ちになりたい、人から注目されたい、と具体的に何を目指すのではなく、漠然と自己実現を望んでいる人のセミナーもある。
前者は経営理論からマーケティング理論まで教えたりするのだろうし、人とのコネクションの構築の仕方とか具体的な論理が存在するだろうからまだしも、後者は、自己暗示やイメージング、果ては瞑想や祈りのようなモノまで、
ニューエイジと呼ばれる人達のセミナーみたい。
ちょっと変わった処では、もうすでに社会的には成功しているけれど、自分は何のために生まれてきたのか? 自分の使命は何だろう? と哲学的な次のステップを求めている人向けのモノまである。
そこでのプログラムは、超能力や霊能力のようなものがチラホラ見え隠れする、もはやオカルトや秘密結社みたいなものだそうだ。
きっと、「自分たちこそは選ばれた民だ」とでも言ってんのかね。
いずれも共通しているのは、すべて机上の空論で、「なったような(成功したような)気持ちにさせる」ことだ。
だいたい、人間は1カ所に集められて、集中的に学ばされ続けると、猜疑心が途絶えて簡単に洗脳されてしまう。
また、自分が高額な代価を支払っているために、「これは、価値のあるものなんだ!」と自分に言い聞かせ、自ら洗脳されてしまおうとする心理も働いている。
セミナーの開催者がそこまで読んでいるのかどうかは知らないけれど、主催者にとって都合の良いことである事実は免れない。
ポイントは、学ぶ期間が一週間から10日くらいの短期間であること、無理をすれば出せなくもないある程度の高額であること、開催場所がホテル等の公的な場で清潔に見える環境が整っていること、である。
さらに、主催者がそこそこ有名で、本などを何冊か出しているならば、さらに信用が得られる。
……確かに、セミナーでは、どんな人も大事にされる。やさしくしてもらえる。そして、これからの自分に大いに期待が持て、夢も見させてくれる。
それで満足するなら良いけれど……。
でも、セミナーが終わって、下界に戻ったら、今までと変わらぬ自分がそこにいる。
セミナー期間中は、あれほど自分に自信が持て、何でも出来るような可能性に満ちていたのに……。醒めてみれば、いつもと何ら変わらぬ無力な自分がいる。
これは、現実じゃない。……いや、どっちが本当なの?
そうして、またあの熱狂に浸りたいために、お金を貯めて再受講をしに行く。
……まるで、麻薬でんがな。
つくづく、セミナー経営者は頭がいいよ。儲かるのは彼らだけだもん。
かく言う拙者も昔は広告代理店にいたから、「成功」という響きには関心があったのよ。
当時は、ナポレオン・ヒルとか、ライフ・ダイナミクスとかのアメリカから入ってきた成功のプログラムセミナーがあって、やっぱり60万も70万もしていた。
幸い、お金が無かったから、そのトラップにはまらずに済んだけれど。
……でもね、世の中にあるのは、そんなものばかりだよ。
成功とは言わないけれど、資格があれば……と言う資格ビジネスも同じ。色彩検定に受かったけれど、何の仕事にも就けないと知り合いが嘆いていたよ。
英語の学校も幾つもあるけど、誰もネイティブのようにはなれないし。
みんながイリュージョン(幻想)の中で、自分をなんとか誤魔化して生きている。
「真の成功」とは何か? 今なら、はっきりとわかるのだ。
魂が求める道を知り、そこに進むこと、それ以外にはない。
ビジネスの成功も全ての自己満足もその過程で通り過ぎていくモノだと。
2012年6月22日
『成功の美学』(中央アート出版社)を久しぶりに読んだ。いやあ、いい本だねえ。
みんな買うてえな、ねえ、買ってえ。