お告げ – 124

変われる? 変わろうとしない? どっちだ?

……巨大な球体型の宇宙船が、ゆっくりと降下し始めた。
宇宙船の外側はぼうっと銀色に光っており、ときおり、虹色の稲妻にも似た光が曲面を横切っていく。
やがて、宇宙船は、しずしずと音もなく大地に着陸した。
その大地は、奇妙な質感を持っていた。土でもない、コンクリートでもない、あえて言うなら硬質なガラス? なのに、宇宙船を支えている所はゆるやかなカーブを描いてたわんでいる。どうやら、一定の重さを超えると、質感が変わって支える設定らしい。
 
宇宙船に数人の人影が近づいてきた。武装も何もしていない。穏やかで静かな人たち。
突然、宇宙船の表面に黒い穴が出現したかと思うと、そこから長身の青年が現れた。地球人の顔だった。
しかし、出迎えた者は人間ではなかった。ガラス質の能面のような表情のない顔をしていた。

「お勤め、ご苦労はんやったなあ、クラトー」
出迎えた者が言った。いきなりの大阪弁だった。宇宙の見知らぬ惑星で……、大阪弁おそるべし!
「……ああ、最初の予定とは違ったが、地球人に猶予(ゆうよ)を与えることで、宇宙の危機を回避できたと思う」
クラトーと呼ばれた宇宙人が言った。心なしか、やや呼吸が苦しそうだった。
『あの星はきつかった……。重力も重い上に、人間の放射する“気”も身体にまとわりつくようだったな……』
クラトーはふと思った。しかし、そのことを口には出さなかった。

「ところでな、地球を観察してたモンの報告やと、おまはんが去った後、スイスのジュネーブで世界各国首脳会議が行われたんやと」
出迎えた者の言葉にクラトーの顔に生気が甦った。
「そうか! なら、今度こそ本気で核兵器廃絶に向かって進み出すんだな!」
「……いや、その逆みたいやで。あいつらは自分たちの脅威、この場合、我々のことやけどな。自分たちを脅かす者を廃絶すべく、より強力な兵器の開発に乗り出したちゅーことや」
「そんなバカな! 地球のアメリカという国で出会ったノーベル賞科学者は、自分たちは“変われる”からチャンスをくれ、と言ったんだぞ!」
「その科学者が、おまはんが解いて見せた時間旅行の方程式を元に、新型の爆弾を思いついたんやと。そのオッサン自身は、人類の防衛線となるエネルギーや言うてはるみたいやけど」
「……」
クラトーの顔を沈黙が覆っていた。


いかかでしたか? 映画『地球の静止する日 その後』の一幕でした。
前作を観ていなかった人の為に簡単にストーリーを紹介しますね。
……ある日、地球に巨大な球形の宇宙船が現れる。地球人はパニックになって攻撃するが、宇宙船には傷一つつけられなかった。やがて、宇宙船はアメリカのワシントンの一角に降り立つ。その宇宙船から出てきたのは、人間そっくりの宇宙人だった。彼は自分をクラトーと名乗った。ところが、不幸な出来事が起きた。恐怖に駆られた軍隊が発砲し、クラトーは倒れてしまう。そこに、ゴートと呼ばれる巨大な人型ロボットが宇宙船から現れ、軍隊のすべての武器を無力化してしまった。
地球人の病院に運ばれたクラトーだが、地球人は彼に安息を与えなかった。地球に来た目的を知るための尋問が行われた。
「何しに私たちの地球に来たのか?」
「私たちの? それは違う。地球は人間のものではない」
そして、クラトーは軍事基地から脱出し、本来の目的を果たそうとする。
彼の逃亡を助け、相互理解に努めようとした女性の科学者に彼は驚くべき事を告げる。
「地球が滅びれば、人間も滅びる。しかし、人間が滅びても、地球は滅びない」
宇宙人は、人類とその文明を消滅させるために来たのだった……。

とまあ、こんなお話しどした(おおっと、いきなり京都のおばはん)。
けど、ほんま、喉元過ぎれば熱さを忘れると言いますか、人間はこりまへんなあ。
わたいなんか、しょっちゅう肩こりですがな。

ところで、映画で宇宙人のクラトーはんが言うてはった言葉に、「君たちは変わろうとしない」というのが印象的どしたなあ。
人間の科学者はんは、「Yes We Can」って言うんどす。いや、違うた。オバマはんかい!
「私たちは、変われる」と。
このセリフ、まるで「あ・うん」の韻を踏んでると思いまへんか?

“変われる”けど、“変わろうとしない”
たち悪いなー、ほんま。
それって、「いつか勝負せんとあかん、けど、それは今やない」と逃げ続けるようなもんどすやん。
けど、人には、「逃げてへん」と言う。借金して、「返せへん言うてへんやろ! 返すって言うてるがな!」と逆ギレするようなもんどす。
 
人間は、「明日出来ることは、明日しよー」と考えますわなあ。
「明日には、幸せになろー」とも言いますやん。
それって、いつまで待っても絶対来ない明日とおんなじとちゃいますう?

せやから、「今がすべて」とか「今が大事」って言うんどすなあ。
けど、宇宙人はんやないけど、わたいも人間をよーさん観て来ましたからわかりますけど、
「変わりたい」言うてるうちは、ぜーったい変わりまへんで。
根拠のないただの願望やから。

それとね、自分から「変わった!」と思うのも幻想や思いますう。
ほんまに変わったお人は、周りから「あんたー、変わったわー別人やん」と言われて、「えーっ、ほんま? 自分では全然気がつかへんねんけど」と答えるお人やと思いますう。
「いや、ぜったい変わったわ。だって、あんた前、男やったやん!」
「……」

まあ、わたい最近思いますねん。
もう、変わっても、変わらんでも、どうでもえーかなーって。
時も世界も、地球も太陽も、待つこと止めはったみたいやし。
“変われる”お人は、もう変わってはりますし。
“変わろうとしない”お人は、どこまで“変わらないぞ!”が出来るか、やってみたらよろしい。
それも、生き様ですやん。

 
2009年6月18日(木)
……梅雨に入りましたね。でも、今の処、ジトジトーという雨ではなく、ドトトドーってスコールみたいに降ったりする雨だったりします。
亜熱帯の気候だとか。自然はもう変わってしまったのですね。
新型インフルエンザのニュースで、ウィルスの一部が変質したとかしないとかの報道が一瞬だけ流れましたが。電車でも、デパートでもマスクしている人をほとんど見かけなくなりました。修学旅行延期とか、どーなったのでしょうね。
この現象は、日本だけでなく、世界でもそうらしいです。旅行に行った友人が、外国でも誰もマスクなんてしていなかったと言ってます。けれど、成田空港は空いていたとか。
ジワジワーッと、何かが動いて、変わっているような気がしますね……。