お告げ – 12

アンタかてアホやろ、ワテかてアホや!


「あっと驚くタメゴロー」で一世を風靡した故ハナ肇のギャグ

第2弾「ゲバゲバ90分」より



世の中にはアホが多い。
 

ぼくが昔、幾つか書いたお芝居は、ものすごいエリートの軍人たちが大事件を前にして、どんどん隠されていたアホさが暴露されていくというテーマが必ずモチーフとなっていた。

 

防衛軍シリーズの第一弾、『地球の静止する日』では、ある国の軍部のプロジェクトチームが究極の新戦略を考案する。それは、念力を使って地球の自転を止めようというものだった。地球の自転が止まる直前、その国の国民たちは地面にしがみつく。すると、遠心力によって敵国の人間達は宇宙に放り出されるという。そこで軍部は、地球を止めることのできる超能力者を探し出す。
 

やがて、玄さんという風呂屋の親父風の超能力者が念力で世界を止めてみせようと現れる。だが、玄さんの超能力とは、「ダルマさんが転んだ」と叫び、人々を静止させるものだった。

 

続く『時間砲計画』では、軍部が前回の失敗を挽回すべく、タイムマシンで時をさかのぼり、相手の敵国がまだ石斧などの原始的な武器しか持っていない時代に近代兵器で攻め込もうという、とんでもない卑怯な作戦を立てる。だが、どうやって過去へ……と、悩む軍部のエリートたち。そのとき、「私が時間を超えて見せよう」と、やはり居酒屋の親父風の超能力者が現れる。そして、彼は、「イートー巻き巻き、イートー巻き巻き、回って回ってトントントン」と、呪文を唱えるのだった。

 

そして、『夢見る異邦人』では、失敗続きで予算をどんどん減らされてしまった軍部のエリートたちが起死回生の作戦として、夢の中で戦争を起こしたらどうだろうと発案する。「夢やから、もし負けそうになったら、夢から覚めたらええんや」とか、「失敗してもタダやから、お金もかからへんし」という、じつに大阪的発想の作戦だった。そして、今度は、夢を操れる超能力者を探すのだが……。現れたのは、ホルモン焼き屋の親父風の超能力者だった。
 

エリートの軍参謀が怒った。「どうして、超能力者というと、こういうタイプしかいないのだ!」。根っからの日本人のくせにハーフのようにふるまう、情報局のスーザン牧野は答える。「本物とは、こういうものです」

 

当時のぼくは、実際の戦争にはとても不向きな学歴だけが取り柄のアホなエリート軍人たちなら、人類が戦争を起こしたくても起こせなくなる、と考えていた。頭の良いはずの人間が愚かな戦争をしてきたことに、絶望感を持っていたのかもしれない。
 

それらを書いたとき、人間が愛すべきアホだったら、残虐なことはできないのにと思った。
 

「同じアホなら踊らなソンソン」と阿波踊りもに唄われるが、アホ同士なら平和にちがいない。

 人間は自分が相手よりも優れていると思い上がったとき、失敗を犯す。
 

人を差別し、自分の考えや行動の方が「正しい」と思いこむ。
 

すると、相手への本当の理解ができなくなってしまう。
 

もし、自分がアホであり、そのことをよく理解していたら(深く考えないように、いきおいですから……)、決して人をバカにはしない。
 

戦争は、自分のアホさ加減を知らない者たちが起こす。
 

自分のアホさを認識しよう。そして、相手を尊敬しよう。そうすれば、とても争いは起こせない。

 『フォレスト・ガンプ』は、こう言う。
 「アホや言うもんが、アホでんがな!」

 

えっ、ワテでっか? もちろん(胸をはって)、アホどす!