お告げ – 04

イヌも歩けば、ネコも歩く
「ぼくらはみんな生きている~、生きているから歌うんだ……、
オケラだって、カエルだって、アメンボだって、みんなみんな生きているんだ、友だちなんだ……」
と、歌ったのは、はるか昔。
ここ未来の火星にある生物再生研究所では、ゾウの鼻が長かったのか、それとも短かったのかの議論が続いていた。
アール博士が立ち上がり、「わたくしが考えますに、ゾウの鼻は短かったと思います。なぜならば、ゾウの鼻がもし長ければ、大きなキバにこすれてケガしたかもしれません」と、言った。
しかし、続いてワレン博士が反対意見を唱えた。
「いや、ゾウの鼻は長かったと推測されます。その根拠は、多くのゾウは、はな子と呼ばれた古代の伝承があります。はな子とは、鼻のことでありましょう。きっと、鼻が目立って大きいか、長かったのです」
すると、おもむろにヨシモト博士が手をあげて意見を述べた。
「いやいや、そもそもゾウはとても小さな生物だったと仮定しなければなりません。【ゾウが踏んでも壊れないアーム筆入れ】という伝説が残っております。ゾウが踏んでも壊れないというのは、「乗っても」という意味だと思います」
その後の、ヨシモト博士の「いや、あれは【やっぱりイナバ、100人乗っても大丈夫】だったかな……、まあいいや」のつぶやきは、誰にも聞こえなかった。
23世紀の未来、人類は地球から多くの生物を滅亡させてしまっていた。地上を覆った電磁波は、遺伝子の情報も歪ませて、クローン再生させても正しい形を生み出せなくなっていた。人々は、古代の記録を頼りに、動物の再生を試みていた。
かつて地球の有史以前に生きていた恐竜たちは、今では化石からでしかその姿を想像できない。
化石にしてもそうそう完全な形があるわけではないために、科学者たちが想像力でその欠けた形を継ぎ足した。
剣竜と呼ばれるステゴザウルスの背びれは身体に縦に生えていたのか、それとも水平に生えていたのかは、まだわかっていない。
草食恐竜のイグアノドンにしても、当初は二足歩行の肉食恐竜に似た姿だと考えられていた。現在の想像図のような四つ足歩行の姿はつい最近のことである。
ところで最近、生まれつきキバのないゾウの誕生するケースが増えているという。
キバがあると、象牙など、人間の金儲けや狩猟の欲望を刺激するからなのか?ゾウたちは自分で自分を守るために、そんな「進化」を遂げたのか?もし、そうなら、それはなんと「哀しい」選択だろう。
人間の都合のために、絶滅した動物は数え切れない。
今も開発や動物実験の下に多くの動物が被害に遭っている。
イヌも歩けば、ネコだって自由に歩きたいのだ。
それを奪う権利は、誰にもない。