お告げ – 117

「出たな!妖怪イゾンシタイネン」

……その妖怪は、自分が困ったときに現れるという、はた迷惑な困った妖怪であーる。
自分でなんにも解決しようとはしないで、すぐに簡単に人に頼ろうとする。

表面はおとなしく、人畜無害に見える。
そして、口先では「自分で自分の行動に責任を取っていきたいです」とか、「自立したいのです」と健気に言う。
 
だが、ダマされはしない!

内心では、「自立なんてしたくなーい」、「誰か助けて、救って!」、「利用できるモンは何でもしてやる」と呪詛のようにつぶやいている。
とても、やっかいなのは、本人にその自覚がない!ということだ。

はて、みんなは気づいているだろうか?
依存には、結構エネルギーがいることを。
なぜなら、依存できる人間をキャッチして、アピールしなくてはいけない。
演技もしなきゃならない。時には、涙も流さなくてはならない。
ヘタしたら、自立するよりしんどかったりする。

それでも、一度、他人の世話になる快感を覚えたら、これが止められないらしい。
 
だが、イゾンシタイネンは、孤独な妖怪でもある。
集団行動は取れない。
なぜなら、常に自分本位だからだ。自己チューの塊である。
稀に何処かの宗教団体で、多数の棲息が確認されるが、そこでも、互いには合い入れないで、独立して生きている。

妖怪イゾンシタイネンの退治の仕方は難しい。
相手は、人の情に訴えかけてくる天才である。
まともに正論を言っても、聞いていないし、
相手を思ってアドヴァイスをしても、自分の聞きたいことだけしか聞かない。

その上、自分は何かの被害者のように振る舞っている。
いっぺん、誰かはっきり言うたって! と思うが、言った途端、石地蔵に化ける。石の押し黙って、ていか、何も届かない。
とんでもない変身能力である。

かくして、妖怪イゾンシタイネンは、ひっそりと人から人へと渡り歩いて、憑依していく。
ひとり、またひとりと理解者や友達を失いながら。

まあ、それでも人間はいっぱいいるし、他人の面倒見るの好きな人もおるし、と一向に気にしない。
口惜しいのは、本当にそういう感じで世の中を渡っていけることだ。

舐めとんのか! って、きっと舐めてるんだろうなあ。
やれやれ、です。


……けれど、そんな妖怪イゾンシタイネンもいつか、脱皮する日が来る!(ような気がする)
それは、正体がばれて、誰からも相手にされなくなった時なのか?
それとも、自らの行為に飽きた時?

ううん、それはね、本気でその人を愛している存在に気がついたとき、さ。
その人は優しいことなんか言わないかも知れない、厳しい態度で意見を言うかも知れない。
でも、本気で相手を心配している。
嫌われたって構わないからと、言いたくもないことを言ってくれる。

その愛が、いつか届く(ような気がする)。
たいがいは、その人が居なくなってから……、それが第二の残念かな。

 
2009年 2月17日 
ふうー。昔、ショットバーで飲んでいたら、言われたことがあります。
「加納さん、女の人、キライでしょ」って。
ドキッしたけど、平気な顔でこう答えました。「そんなことないよ。人が苦手なだけ」と。
あれから、何十年も経ちますが、人間に対する感覚が全然変わっていないように思えたりします。
毎年、恵方巻きとか、バレンタイン続いてますし、真実に目を背け続けてるし、人が人を騙してるし……。
それでも、みんな一生懸命生きとります。それだけはスゴイなーと思うし、認めますが。