風の言葉 – 42

思い通りになる世界……

……夜中にハッと目が覚める。汗がびっしょり。
 暗闇の中、現実と非現実がゆっくりと入れ替わり、やがて……、そっと胸をなで下ろす。
 「ああ、夢か……。夢で良かった……」
 ほんの数秒の中で湧き起こる安堵のため息。

 そんな経験はなあい?
 なければ、良かったね。あなたは幸せな人だよ。

 でもね、残念ながら、そういう人は結構多いみたい。

 この不自由な世界に生きていて、時折、思うでしょ。
 「ああ、何にも思い通りにはいかない……」

 確かに! ほんとにうまくいかないね。
 「夢はあるのに、仕事がない!」と言っていた、あるある探検隊の言葉を思い出すよ。

 希望を持って進んでいける人もいれば、絶望を噛みしめつつそれでも歩いていかなきゃならない人もいる。
 同じ「人」なのに、その違いはあまりにも大きい。

 そして、一握りの喜ぶ人を残して、数十億のため息が世界に降り積もる。
 けれど、その喜んでいる人だって、きっと本当には喜んでなんかいない。
 届かぬ思いに、苦しんでいたりする。

 じゃあ、誰一人、幸せじゃないじゃん……。


 もし、目の前に魔法使いか、悪魔が現れて、何でも望みを叶えてあげると言ったら、どうする?
 「自分の思い通りになる世界」を望む?

 そうなれば、今までのように、嘆いたり、人を憎んだりしなくて済むから……。
 今度こそ、幸せになれる?

 ……そうね。人が建設的な生き物なら、ね。

 でも、人間はすぐにカッとなったり、理不尽なことに腹を立てたりするでしょ。
 それが、自分のよく知っている人だったら……。

 「あんな人いなくなっちゃえ!」
 そう思った途端、その人の所に居眠り運転のトラックが飛び込んできたら……。
 そんなつもりはなかった!!!! 激しく後悔するけど、では、どんなつもりだったの?

 「少し、憎いと思っただけなんだ……」
 それが自分に向いたら?
 自己嫌悪は、命がけだったりするよ。 

 今、人がたくさん病気になってきているでしょ。世界中で。それが、自己処罰の結果だったらどうするの……?
 それが、「霊化」しているという“現実”なんだよ。
 ……無視してもかまわないよ。けれど、進化は止まってはくれない。


 映画『地球の静止する日』の宇宙生命体クラトゥーなら、きっとこう言うね。
 「……人間はまだ自分の感情をコントロールできない。だから、“思い通り”にならなくて、助かっているのだ」

 もし、思い通りになっていたら、世界は何度滅びたことだろう。

 「夢で良かった……」
 それは、自分のもう一つの可能性。選んではいけない未来。

 今の内に、……まだ、自分の未来を選択できる今のうちに……。
 自分の感情を「抑制」ではなく、コントロールしていきましょうね。

 「どうして、こんな感情になったのか? 本当に自分は悪くないのか? 相手は、悪意しかなかったのか?」
 そして、その出来事は、自分に何を教えようとしているのか? 
 もう、そろそろ気づかぬふりではなく、その事に向かい合ってもいいんじゃない?

 時間はあるようでない。でも、無いようで、あるから。


2009年1月13日 晴れ。
ずーっと正月は、良い天気でした。
「過去の事は、過去にしてしまえ」という言葉がありますが、本当に、前から引きずっているものがあるなら、今のうちに精算しておきましょう。
あの時、ああすりゃ良かった……は、ずっと自我を引きずるから。
まあ、今年の加速は凄いから、そんな事も忘れてしまうかも、ね。