風の言葉 – 53

烏合の衆、皆の衆……
「右向け!」と言われたら右を向く人々……。
マスコミの情報をなんでも鵜呑みにしてしまう。
外国人に言わせると、日本人ほど操作しやすい国民はいないそうだ。
ちょっとムッとするけど、そうかもしれない……と思ってしまう。
今年の5月、薬局ではマスクが品切れになっていた。
みんながこぞって買い占めたためだ。
言わずと知れた新型インフルエンザの影響だった。
街を歩けば、マスクをしている人だらけ。電車の中でもそう。
マクドナルドやファーストフードの店員達もマスク越しに、「ご一緒にポテトはいかがですかぁ?」と聞いていた。
学級閉鎖になった小学校もあった。修学旅行も中止になった。海外旅行を控える人が後を絶たなくて、つぶれた旅行代理店もあったという。
ほんの少し前のことだった……。
けれど、インフルエンザはまだフェーズ5だった。
6月に入って、世界保健機関(WHO)は、警告レベルをフェーズ6へと引き上げた。
もう食い止められない、地球規模での感染という判断だった(世界的大流行=バンデミックと呼ぶんだよ)。
……でも、おかしなことに、その頃から、街からマスクの人たちが消えた。
マクドナルドの店員さんもマスクを外して、「ご一緒にポテトは……」と明るい笑顔で聞いてくる。
新聞やテレビもインフルエンザを報じなくなった。
報道管制……? 社会への影響が深刻になるから?
誰もが一瞬、「えっ?」と感じたはずだ。だって、フェーズ6はフェーズ5より深刻でしょ? と。
そのとおり、だって、経済アナリストたちは、「企業は、事業継続の為の準備を……」と警告しているから。
従業員が大量に感染したら、会社の業務が維持できなくなる。
それは、社会だって同じ。学級閉鎖どころか、学校も閉鎖になるかもしれない。
江戸時代じゃないけど、「鎖国」する国も出てくるかも。
7月に入って、感染者は10万人を越え、WHOは実数の把握を断念した。
そして……、ワクチンのタミフルへの耐性を持つウィルスが発見されたと小さく報道された。
8月に入った。今では、どこにもマスクをしている人は見かけられない。
まるで、世界からインフルエンザが消えたかのよう。
報道もされない。誰も騒がない。
良かった! やっぱりたいしたことなかったんだ! 周りが大袈裟に言ってただけじゃないのか!
……と、思う?
……氷山の一角って言葉があるよね。
表に出ていないもののが方が大きいって。
世界はたいていそんなものだ。
人々に知らされている事の方が少ない。
施政者は言うよ。「知らない方が幸せだから」と。
そうかもしれない。でも、そうでないかもしれない。
まあ、「本当のことを知りたくない病」は、ある意味、新型ウィルスよりもやっかいだったりするから。
今の世界は、やっぱり人々の意識の反映であることがわかる。
恋愛とかすると、人は自分の信じたい事だけを信じ、それ以外は見えなくなるように、世界がどんな状況かをニュースで大々的に報じても、人は知りたいことだけを見るのだと思う。
それって、変だよ。
見たくないもの、知りたくないものは、「無かったこと」にしてしまう。
見ザル、言ワザル、聞カザル……。
それは、自我という病気なんだ。
僕には、ウィルスよりも何よりもそっちの方が深刻に思えるけど……。
2009年8月1日 晴れ。
7月末に、歌手の川村カオリさんがガンの再発で亡くなられた。
昔、僕の周囲では、彼女のファンが何人かいた。すごく良いのだ、と。
僕は顔さえも知らなかったけど。
だから、報道を知って、過去の時間が甦った。
川村さんのご冥福をお祈りいたします。
人は、本当に一瞬先がわからない。わからないなら、知らない方が良いのかもしれない。
でも、きっと、「何で教えてくれなかったんだ」とも言うと思う。
どちらにしても、「その時、自分はどうするのか?」なんだと思う。
自分の一瞬と人の一瞬。
いつも考える癖をつけていたい。
お待たせしました! 陰と陽の理のごとく、7月7日に起きた変化は、8月に具体的に社会に現れます。
奇数月と偶数月の関係ですから。……額の第三の目の覚醒は、ちゃくちゃくと進んでいます。それが、実際の生活にどう影響してくるのかは、まだ誰も知りませんが……。楽しみにしておいてくださいね。