風の言葉 – 57

ああ、平常心

時に、人生に一番大切なものとされているのが、平常心。

「明鏡止水」だとか、「一心如鏡(いっしんかがみのごとし)」とかいわれたりしているけど、まあ、一般には「モノゴトに動じない心」と解釈されるよね。
武道で言うと、不動心。読んで字のごとく「動かない心」。
これを養うのが武道の神髄だと、かの宮本の武蔵坊弁慶(?)さんも言うてはりました。

けれども、その平常心がなかなかに難しい。ともすれば、私たちはすぐに動揺し、自分を見失ってしまうから。
 
あるとき、これぞ平常心! という現場を目撃した。

それは、大分の某ビジネスホテルでの出来事だった……。
たまたま朝食券付きのプランで泊まっていた私は、久しぶりの朝食を楽しみにレストランに行った。
そこは、よくあるようにバイキング形式の朝食だった。

トレイを持って、食べたいモノを乗せていく。
とろろ、切り干し大根少々、シイタケの煮物一切れ、タマゴ焼き二切れ、十穀米お椀半分、味噌汁、そして、お漬け物がお皿を飾った。
知らない人から見たら、「ダイエットしてはんの……?」と思われるほどの少なさだろう。
それでも、微食を人にも勧め、タダのチケットがない限り、めったに朝食など食べない僕にしては多い方だった。

ところで、朝食のバイキングを見ると、思い出す二つの場面がある。
一つは、どこか北陸のビジネスホテルだった。場所もホテルの名前も記憶にない。僕がまだ二十代で広告代理店に勤めていた頃だった。
その頃の僕は、「微食」などとは程遠い、大食漢(たいしょくかん)だった。夕食を食べ終わってものの30秒も経たないうちに「ラーメン食べに行こうよ」と友人を誘っては断られていた。
その北陸のホテルの朝のバイキングは「美味しい!」と評判だったらしい。僕は、和食と洋食の二つのコースを堪能した。和食をトレイに乗せるだけ乗せて、二回くらいお代わりをして食べたあと、今度はパンを中心にした洋食のバイキングをやはり二回お代わりしたのだ。一緒に来ていた上司からあとで聞いた話だが、ホテルの従業員は、僕が和食と洋食をトレイいっぱいに乗せてバイキング会場を回っているのを見て、同じ服を着た双子なのか? と思ったという。
その時の朝食は確か1200円だったのだが、「朝から1200円って高いですねえ」と僕が言ったら、すかさず上司が「君のは高くない!」と返してきたのを覚えている。

もう一つの場面は、やはり広告代理店時代の某ペイントメーカーのPRビデオの撮影の仕事で、シンガポールのSホテルでの朝食だった。
ホテルの様子は思い出せないけれど、水着でエレベータに乗り、屋上に在ったわずか15メートルくらいの小さなプールをクロールで何度も何度も往復して、外人にイヤがられたのを覚えている。
やはり海外のホテルでも朝食はバイキング形式だった。
僕は、その時は、なんと一つのテーブルいっぱいに食べ物を載せて、それらを瞬く間に食べきって見せたのだ。食パンなんて、一斤あった。
レストランのスタッフが遠くから指さしていたのを微かだけど覚えている。
……だから、微食をモットーにしている今の僕を見たら、昔の知り合い達は、完全に別人か、宇宙人に乗っ取られたのだと勘違いするにちがいない。

ああ、そうそう、「平常心」の話だったね。

そう、大分のホテルで、僕はつつましやかな朝食を食べたのさ。
で、ヨーグルトが欲しくなって取りに行ったんだけど、その前に目の前の食器を下げてもらいたくてレストランのスタッフを捜したけれど、忙しそうにしているので声をかけるのを止めた。
で、どうしたのか? と言うと、自分のトレイを他のテーブルに置いたのさ。そこには、すでに誰かの“終わった”トレイが在ったから。そうしておくと、ウェイトレスが下げてくれると思ったから。

……ところが、その席は無人ではなかった。誰もいないはずの席に一人の青年が食べ物をお皿に載せて戻ってきたのだ。
どうやら、最初からその席は終わっていなかったらしい。ひととおり持ってきたモノを食べて、さらに取りに行っただけだったのだ。

僕は、心の中で「しまった!」と確かに思った。
そりゃそうだろう。自分の目の前に、誰かの食べ終わったトレイが置かれているのだから。
けれど……、その青年は何事も無かったかのように、平然と食事を始めたのである。
僕は、自分の目を疑った。
平気なのだろうか? 自分が今まで座っていた席に、見知らぬトレイが置かれていて、しかも、食べ終わったものが!

もちろん、食べ残しなんてしなかったけれど、見ていて気持ちの良いはずがない。
僕なら、「すいません! 誰かが置いていったので、すぐに下げてもらえますか」くらい、レストランの人に“言いつけ”たにちがいない。

混んでていっぱいなら仕方がないけれど、レストランは結構空いていて、キレイなテーブルは他にいっぱい在ったのだから。わざわざ自分の食べている前に他人の終わったトレイが置かれるなんて、普通だったらあり得ないでしょ。

しかし、その青年は何事も無かったかのように、さきほど自分が持ってきたお皿も平らげ、コーヒーを取りに行き、再び席に戻って平然と飲み始めたのである。
おそらく、レストランのスタッフは、青年の前のトレイを先ほどまで一緒だった青年の友達のものと思って下げないのだろう。


「平常心」、それは、何時、いかなる時にも己を忘れない心。
何事にも動揺せずに、自分を冷静(霊性?)に保つこと。

その青年はもしかしたら、ものすごい育ちの良い人で、家の中に何人もメイドさんがいて、何から何まで面倒を見てくれて、あまり細かい事を気にしない人なのかもしれない……、と僕はそう思うことにして、レストランを去ったのだった。


2009年11月12日(木) 
昨日、今年最後の「霊化促進キャンペーン」である11月11日が過ぎました。日本全国的に大雨の一日でした。
太陽の急激な収縮と膨張に、金星と木星と土星まで関わって、そらもう大変なエネルギーどした。
で、自我の崩壊が促進されたそうです。
その結果、どうなっていくのか? それは、誰にもわかりません(ボク、知ってるモーン)。
いよいよキャンペーンも来年の1月1日で終わります。
さあ、来年の皆さんの明日はどっちだ!? どうか、平常心で……。

ところで、11月10日に奈良県桜井市の纏向(まきむく)遺跡から、ヒミコの宮殿? とおぼしき柱の遺跡が発掘されましたね。まきむく遺跡と言えば、昔から邪馬台国の有力な地とされていて、近くの箸墓古墳などは、ヒミコのお墓ではないか? と想像されているシロモノです。
ニュースステーショにも紹介され、いよいよ九州説、近畿説の決着が着くか!? と盛り上がりを見せていますが、ああ、『ヒミコ伝』が話題にならないかな……。
誰もが納得する(アッ!と驚くタメゴローかも知れないけれど)答えと説明が書かれてあるのにねえ……。