風の言葉 – 59

「距離」を取ることの意味

……多くの人は、「感情」の中で“思考”してしまう。
そこから、いろいろな“もつれ”が生まれたり、“行き違い”や“誤解”が生まれたり、更なる「感情」が生まれて、その中で、また新しい葛藤に苦しんだりする。

 どうして、そうなってしまうのか?
 
 「自分を勘定に入れず……」
 宮澤賢治は、「雨にも負けず」の中でそう言った。

 そうなのだ。
 私たちは、つい自分を中心に考え、行動してしまう。

 だから、「自分の気持ちに素直に」という言葉が大好きで、その時の「感情」に従うことが、とても良いことのように錯覚してしまう。
 けれど、それは時に「相手の事や立場や気持ちを考えないこと」に繋がったりしてしまう。
 その結果、自分の気持ちには素直でも、相手の気持ちを傷つけたりする。

 私たちは、「相手の立場に立ってモノゴトを考える」というのがとても苦手だ。
 それは、「共感」の能力の幼さの証明でもあるけれど。

 まず、自分の気持ちや立場を優先してしまう。
 時には、自分の所属する会社や社会の立場にしか立てなくなる。

 だけど、それでは、どこまでも平行線で、人と本当に“わかり合える”ことは難しい。

 自分はその人ではない。
 その人も自分ではない。
 誰も自分以外の人間にはなれないし、求めてもいない。
 それは、わかりきっている。

 でも、どこかで互いを正しく観ないと、小さなズレはやがて大きくなって、どうしようもない「距離」を作ってしまう。
 その「距離」は、自分と人を遠ざけ、自分自身の事もわからなくさせてしまう。
 そんな距離はダメだ!


 大切なのは、まず、自分自身に「距離」を取ること。
 今の自分の「感情」を一旦鎮めて、冷静になってから「思考」する。
 次に、今、これを言う(行う)事が本当に正しいのかどうか、第三者的(客観的)に考えてみる。
 さらに、「相手の立場」に立っても、考えてみる。
 
 ……それは、TPO(Time , Place , Ocassion)、「時、場所、状況」を考える事になる。
 その時、人は、自分自身にも相手に対しても「良い距離」を取っている。
 それが、「礼」となる。

 いわば、「距離」を取るとは、「感情」に流されず、論理的に「思考」する為の合理的な方法と言える。
 
 さて、今、あなたを悩ませている“問題”に対して、「距離」を取って考えてみよう。
 今までとは違った“視点”に気づいたり、解決策が見つかったりするかもしれない。


2010年2月1日(月)冷たい雨の一日。 
本当に大切なものは、人の目には見えない。
それを言ったのは、誰だったろう?
……今年、心の目を大きく見開いて、魂の耳を澄ませて、世界がどう動いていくか、注意深く視ててごらん。
僕が言ってきた事が、本当はどういうことだったのか? きっとわかるから。