お告げ – 23

大阪人の正体!?
……恐れていたことが起こってしまった。
なにが? という人は、まだ気づいていないのか!
いや、そんなはずはあるまい。
なにしろ、全世界のメディアにいやというほど見せつけてしまったのだから……。
阪神タイガースが、18年ぶりに「優勝」した。
それによって、熱狂したファンたちは、先を争って川にダイブした。
世界に名だたる、大阪の道頓堀やドイツのライン川、果てはパリのドゴール広場の噴水に、全世界で5400人ものタイガースファンが川に飛び込んだのだ。
Born to Dive まるで、「飛びこむために生まれてきた」かのように。
……きっかけは、ニュースステーションのキャスター、久米宏のコメントだった。
「それにしても、世界各地にこんなに阪神タイガースファンがいたとは驚きですね……」
その言葉を聞いて、はっとした人は日本中にどのくらいいたのだろう?
その昔、乱波(らっぱ)とも、忍びの者とも謂われた忍者たちの中には、ある特殊な使命を帯びた者たちがいた。
敵の領地に忍び込み、そこで一般の民と交わりながら、情報収集を果たす。その期間は時によって、数ヶ月から、数年。あるいは、子から孫へと代々に渡って「忍ぶ」こともあるという。彼らは、民草(一般市民)に入り込むことから、「草-くさ」と呼ばれた。
しかし、その草たちは、ひとたび戦乱などが起きると、忍びに戻って活動した。
世界に散っていた、大阪人たちは、あなたのご推察の通り、じつは「草」である。
……いや、だった、というべきか……。
彼らは、いつの日か来たる、「大阪人の、大阪人のための、大阪人による世界」の実現のために、世界の各地で潜んでいたのである。
雨にも負けず、風にも負けずに……。
それが、あの阪神タイガースの優勝のあまりの「嬉しさ」のためにか、つい、「草」である使命を忘れて、川や噴水に飛び込み、結果的に、世界各地にあんなに「大阪人」が大勢いたことをバラしてしまったのだ。
なぜか?
それは、大阪人の弱点ともいうべき、その体質にある。
元来、大阪人は、あの『解体新書』の杉田玄白が認めているとおり、「血」が濃い。血中濃度が、他の地域の人たちと比べて、異様に濃いのである。それは、何を意味するのか?
血が濃いということは、「沸点」が低いということだ。つまり、すぐに、カッとなる。いわゆる頭に血が昇りやすい。そのため、頭が重くなり、身体は前屈みになり、自然に腰が低くなる。
大阪商人のルーツはこれである。
きっと、阪神タイガースの優勝という大きな火が、大阪人の血液を沸騰させたにちがいない。
せっかく、今まで、堪え忍んできたというのに……。じつに、残念である。
思えば、今から18年前、前回の阪神タイガースの優勝は、私にも責任の一端があった。
当時、私は、「国破れてサンガリア」というコマーシャルを作って、お調子者になっていた。その勢いで、阪神タイガースの岡田選手と掛布選手に、今度は「おはようサン」「……ガリア」という掛け合いをやらせてしまったのである。
そして、その年に、阪神タイガースは優勝した。その時にも、道頓堀川に多くの大阪人がダイブし、ケンタッキーフライドチキンのカーネルサンダース像も投げ込まれた。
それからである。私が、大阪人を刺激するようなコマーシャルを作らなくなったのは……。
大阪人よ、世界中に正体の知られてしまった大阪人よ。
もはや、こうなれば、「立ち上がる」しかない!
「地球の中心は大阪でんがな!」と、いうことを世界に知らしめるために!
立てよ! 大阪人!!!
最後に幸福屋から一言。
『スタートレック』のバルカン星人スポックは言う。
「地球人は、比論理的だ。感情をコントロールすることがとても難しい……。まして、大阪人は……」
……ああ、大阪人が、感情を制御できるようになったなら、世界は「進化」するにちがいない。