あいうえおの国
ホテルマンのフロントの教育係をしている人から、
「絶対に言ってはならない言葉」というのを教えてもらったよ。
それはね、「今日はヒマねー」という言葉だとか。
遠くからでも、そう言っているのがわかるからだという。
「何故って?」
それは、肩が下がっちゃうからだって。
そして、本当に、客足が遠のいていくらしい。
でも、「今日はお客さんが少ないわね」と言っている時は、まだ背筋がしゃんとして、遠目にも、「頑張って」いるように見えるとか。
すると、不思議に、お客さんが現れたりするんだとか。
「言霊の力って、本当にあるのね」と。
ねえ、不思議でしょ。
「ヒマねー」と「少ないわね」というのは、似たり寄ったりの言葉だよね。どっちかと言うとネガティブな。
でも、「ヒマねー」は、身体から緊張の糸みたいなものがプツンと切れて、本当にダレてしまう。
どこが違うのかな? たぶん、「ヒマねー」というのは、欠伸(アクビ)みたいな伝染性があって、言っている人の「脱力感」が、オーラを通して、人にも、伝わってしまうんだろうね。
「お客さんが少ないわね」だと、まだ「あきらめてない」エネルギーが残っていて、今度は、それが、磁気のように人を呼ぶのかもしれない。
釣りをしていて、じっと待っている人と、投げやりになっている人の違い、みたいなものかな。
「言霊」の正体は、言葉に乗っかっているエネルギーなんだ。
怒って「バカ」っていう時と、愛してるから「バカッ」っていう時、同じ言葉でも、伝わっていくものが違うでしょ。
何を放射しているのか、波動がすべてと言った人もいるよ。
今、言葉で「傷ついたり」「腹を立てたり」「泣いたり」している人は多いんじゃないかな。
何気ない一言で、「自信がなくなったり」「自己嫌悪」に陥ったりする。
言った人は、そんな気は毛頭なかったのに。
隠れている「悲しいエネルギー」が、誘発されたのかな。
でも、言った人の中にも、どこかで、傷つけるエネルギーが含まれていたのかも知れない。違うことで腹を立てていても、言葉には、そのエネルギーが乗ってしまうから。
だから、言葉を慎重に選ぶ、という心配りが必要となる。
子どもを叱るときは、純粋に、そのことだけで叱ろうと言うのもその為。
ついムシャクシャしていたから、で叱ったら、子どもは何で怒られたのかわからなくなって傷ついてしまう。
言葉を発するときは、自分の「気配」がどんな状態かをチェックしないとね。
思えば、僕もいっぱい傷つけてきたし、傷ついてもきたから……。
そして、出来るなら、「生きた言葉」を発して、できるだけ、人を幸せにしたいもんだね。
私たちは、「あ・い・う・え・お」の国に生まれたもの。
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