海の中で見上げた月

〜「開運 しあわせお招き本舗」エピローグ より〜

ずうっと上空にそれはあった。

実際には、それが上なのか、本当は下なのかはわからない。

ただ、見上げるといつも上にあってそれはユラユラと光の中で揺れていた。

「……彼が目覚める。青い光の中で……」

水の中から、月を見上げたことがあるだろうか?ぼくは一度ある。

太平洋マリアナ諸島の古代遺跡の眠る島、ロタ島で、海に潜っていたときに上空に青い光が揺れていた。

明るい月の光は、周囲の水を透きとおらせて輝いていた。

そのとき、ぼくはある声を聞いたのだ。

「……これからは、笑いの時代でおま。笑いながら、涅槃に行けるんが一番の幸せ者とちがいまっか……」

その力強い声は、ぼくに遠い昔に忘れかけていた勇気をよみがえらせてくれた。

「そうだ!まだあきらめちゃダメだったんだ」

ぼくは、自分のお役目をすっかりあきらめかけていたのである。

「幸福屋」開運しあわせお招き本舗ーーその名を知る者は幸いである。

悲しいとき、辛いとき、運命を呪ってしまいたくなるとき、「幸福屋」を呼ぶがいい。

きっと、何かが起こる。伝承にはそう記されている。

かつて宮沢賢治は、最初の詩集「春と修羅」の序に、「わたくしという存在は、仮定された有機交流電灯のひとつの青い照明です」と書いた。青い照明とは、「あらゆる透明な幽霊の複合体」だという。

人の中には、水晶のような青い意識の結晶体がある。

その中には、自分の知っている自分とまったく知らない自分がいる。けれど、それは一般に知られている多重人格をさすのではない。多重人格は、抑制された自我が姿を変えたり、別の意識体が入りこんで現れる「心の闇」にすぎない。

人の中の青い結晶体は、「魂」という巨大な宇宙を構成する銀河の集合体のようなものである。

そこには、かつての過去世を生きたあなたの「記憶」も結晶として存在する。また、宇宙の別の惑星の生命体であった「意識」も個として存在している。

人間は、それほどに本当は複雑で神秘的な「生命体」であるのだ。

あなたの中にも、あなたとはまったく違うけれども、やはり尊い使命をもって、世の中を幸福にしたいと願っている魂がきっといる。

そんな、あなたのために、この本が役に立ちますように……。